Q&A
最近、カノクリニックのホームページの質問フォームに寄せられ、みなさんに公開することが有益と考えられたものです。今後とも重要と考えられたものは匿名で引き続き公開します。
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現在35歳です。基礎体温はきれいな二相性ですが、生理が25日間隔です。いまだに妊娠しません。何が悪いのでしょうか?
(Y.O. 川崎市)
A.01
25日の月経周期ということは、排卵日は14を減じた11日目ということになります。假野クリニックの18年間の統計では11日以前に排卵した人で生児を獲得した人はいません(妊娠者は全て流産してしまいました)。従来より早発排卵は“更年期の入り口”と考えられており、良好な原始卵子の枯渇が始っていると考えられます。あまり時間が残されていないと考えた方がいいでしょう。
排卵を遅くする治療としては、まず、芍薬甘草湯による漢方療法を行います。50%程度が有効です。これでダメな場合は体外受精の卵胞発育法と同じ、GnRHa-hMG療法を行います。この際、hMGの注射は隔日程度でOKです。卵胞径が1.6cm以上になったら月経周期13日以降にhCGを注射して
排卵を誘発します。非常に有効率が高い治療法です。
最近月経の量が少なく、妊娠しません。子宮が悪いのでしょうか?
(T.E.帯広市)
A.02
月経量は内膜の厚さに比例します。子宮が小さい場合は少なくなりますが、最近少なくなったのであれば子宮内膜が薄いのが原因です。子宮内膜は卵胞ホルモンによって厚く(増殖)なります。すなわち、卵胞の発育が良好な時は月経量は多くなります。少ないのは卵胞機能が悪いのです。卵胞機能が悪ければ不妊になります。月経量は卵胞機能の結果であって、原因ではないことを忘れないで下さい。
体外受精で3回妊娠しましたが、全て流産でした。いずれも超音波で胎嚢はみえませんでした。今後どうしたらいいでしょうか?
(T.A.東京都)
A.03
妊娠反応の結果と胚のグレードが問題です。黄体機能刺激のためhCGを注射している場合は妊娠(着床)していなかった可能性もあります。胚のグレードがよかった場合は免疫的に拒絶された可能性がありますので不育症の検査が必要です。そのまま体外受精を重ねても同じ結果になるでしょう。胚のグレードが悪かった場合は卵子の不良が原因と考えられます。
妊娠しないので近くの産婦人科を受診したのですが「まずクロミッドからいきましょう」といわれました?
(R.A.東京都)
A.04
クロミッドは卵胞、黄体機能を高める薬剤です。しかし、頸管粘液を減少させたり、子宮内膜を薄くする不妊作用があります。「とりあえず」であれば子宮―卵管と御主人の精子の検査をしたうえで漢方療法から入るべきでしょう。
「基礎体温は重要だから、水銀体温計で毎日、正確に計るように」と指導されました。毎朝、目覚まし時計で定時に計っています。
(K.N.大阪市)
A.05
基礎体温で排卵の有無、排卵日、黄体機能が判ると考えられてきました。しかし、超音波やホルモン検査の進歩でいずれもあてにならないことことがわかりました。厳密に計ろうとすると、株価のように、上がった下がったで毎朝、一喜一憂するために、ストレスになってかえって卵巣機能が不安定となり妊娠しにくくなってなってしまいます。「基礎体温不妊症」です。目覚まし時計ではストレスは倍増です。デジタル体温計(ただし、婦人用)でいい加減に計って下さい。御主人の出勤などで朝、バタバタした時はサボって下さい。旅行に出かけたり、実家に帰った時などは計ってはいけません。リラックスした方が妊娠の可能性が高まります。
体外受精で大きな卵が10個できたのに、3個しか採卵してくれませんでした。先生は「私は腕がいいから3個で充分なんだよ」と言っておられましたが、もったいない気がするのですが。
A.06
体外受精で未採卵の卵胞を残すと、妊娠した場合、卵巣が腫大して、最悪の場合は母体の命が危険に瀕する事態となります。卵子がもったいないのは勿論です。取りにくい場所にある場合は“残し卵”は致し方ありませんが、できるだけ採卵した方がよいにこしたことはありません。
薬局で売っている排卵予想日の尿試薬でタイミングを計っていますが、妊娠しません。なんででしょう?
(N.M.神戸市)
A.07
脳下垂体から分泌されるLHを判定することで排卵日を予測できます。しかし、私はこの検査を積極的に薦める気にはなれません。患者さんが排卵日に性交する、いわゆる「タイミング法」にこだわりが強くなってしまうからです。排卵日にセックスすれば妊娠するというものではありません。排卵する卵子の質や、排卵後の黄体機能の方がより重要なのです。排卵日にこだわるためにかえって卵巣機能が悪くなってかえって妊娠しないことになってしまいます。「タイミング不妊症」です。またセックスが“仕事”や“義務”になってしまうのも夫婦には重大な問題となります。
抗核抗体陽性不育症で副腎皮質ホルモン療法を薦められました。副作用が心配です。
(K.O.名古屋市)
A.01
薬理学的には副腎脂質ホルモンは有効ですが、プレドニンを一日6〜8錠と、かなり大量に服用しなければ流産阻止作用は期待できません。いつ妊娠するか分からないのにこれだけの大量を長期間服用すれば、副作用の発現は必至です。安全性と有効性から考えて、漢方薬の柴苓湯をファーストチョイスとすべきでしょう。
今までに3回流産しています。黄体機能不全が原因といわれました。どうのような治療をうけたらいいでしょう?
(H.K.東京都)
A.02
流産は偶発流産と必然流産に分類されます。前者は月経周期毎に変化する因子が原因の流産で、後者はそれとは関係のない免疫的原因に拠る流産です。黄体機能は周期毎に変化します。したがって黄体機能不全に起因する流産は不育症ではなく、確率的に三回連続して流産することはまずありません。不育症の検査をお薦めします。
不育症の検査を保険で受け、何を検査されたかは分かりませんが「異常ない」といわれましたが、これで充分でしょうか?
(F.Y.東京都)
A.03
不育症の検査は遺伝子や高度な免疫検査が多いため、残念ながらその重要な項目は健康保険の適応にはなりません。適応となるのは染色体、抗核抗体(ANA)、抗カルジオリピン抗体(抗リン脂質抗体;ACA)などです。このなかでACAはACAGP1複合抗体、ACAIgG(MBL法は)感度が悪くあまり診断的価値はほとんどありません。健康保険とならないACAIgMを行う必要があります。その他、同種免疫異常不育症の検査であるHLAタイピング、リンパ球混合培養試験(MLC)、N-K細胞活性は必須の検査です。)
自己免疫異常と同種免疫異常の意味が良く分からないのですが?
(M.T.姫路市)
A.04
健康な人は体内に自らの遺伝子と異なったタンパク質が侵入するとこれを拒絶して健康を護る防御機構があります。免疫といいます。この免疫力が強すぎて、本来は拒絶しなくてもいいものまで拒絶してしまう病態が自己免疫異常です。花粉症などのアレルギーもこれです。抗核抗体(ANA)、抗カルジオリピン抗体(抗リン脂質抗体;ACA)などが陽性となります。治療としては免疫を抑える薬物を使用します。西洋医学では副腎皮質ホルモンが代表格です。漢方薬では柴苓湯、小柴胡湯、補中益気湯などが処方されます。同種免疫異常は逆に免疫力が弱くて胎児を近親児と誤認してしまう免疫異常です。HLAタイピング、リンパ球混合培養試験(MLC)、N-K細胞活性などの検査で診断します。治療としては免疫を増強する目的で夫(他人)リンパ球移植が行われます。
始めての妊娠が流産してしまいました。「どうして私の赤ちゃんは死んでしまったのですか?」と主治医の先生に質問したら「染色体異常でしょう」といわれました。不育症ではないのでしょうか?
(R.A.岡山市)
A.05
生涯一度だけの流産で胎児が染色体異常である確率は57.0%です。染色体異常の場合は致し方ありません。しかし、問題は43.0%が正常児であるという事実です。正常児の流産はたとえ初めてであっても不育症の可能性が高く、その後も流産を繰り返す可能性が高いのです。不育症の診断を3回以上の連続流産を根拠とすることは母体の肉体的、精神的損傷から考えてナンセンスです。たとえ初めての流産でも流産胎児の染色体検査をしてもらってください。正常の場合は不育症の検査をしてください。子供の死は決して無駄にしてはいけません。次の子供の出生に貢献できればその死は報われるのです。

