基礎知識>不育症
不育症とは?
子宮不育症
染色体異常不育症
自己免疫不育症
同種免疫異常不育症
N-K細胞機能亢進不育症
当クリニックの得意技
染色体異常不育症
両親の染色体(遺伝子の集合体)異常が胎児に遺伝して、出生しても生存できない核型になるために免疫的に自然淘汰される流産。 みなさんは、染色体異常と聞くとすぐにダウン症候群(21番染色体トリソミー)を想起するでしょう。しかし、同症の場合はほとんど両親の染色体の核型は正常ですから遺伝ではありません。胎児の染色体がトリソミー(同番の染色体が三本存在する)やモノソミー(一本しかない)の流産は遺伝ではないのです。詳しい原因は不明ですが卵子の異常や環境因子が関係していると考えられています。 不育症の原因となる染色体異常は転座です。生物は遺伝子の数が多くても少なくても生存できません。なかでもヒト科の動物は1番から22番までの常染色体が重要です。21番のトリソミー以外は生存できないと考えられています。 転座は染色体には過不足がありません。遺伝子が引っ越し(転座)した染色体異常です。図の症例は17番染色体の遺伝子の一部が4番に転座しています。しかし、この男性は遺伝子に過不足はないので肉体的精神的には健常者です。胎児は父親と母親の染色体を半分ずつ受け継ぎます。となると、17番の遺伝子が不足している染色体を受け継ぐ確率は2本に1本ですから50%、遺伝子が多い4番染色体を受け継ぐ確率は2本に1本ですから、これも50%、したがって正常核型になる確率は25%になってしまいます。しかし出生できる親と同じ転座核型になる確率も25%ありますので、出生確率は50%ということになります。 染色体1本がそのまま他の染色体に転座した核型をロバートソン(人名です)転座といいます。同番の染色体に転座した場合をロバートソン相同型転座といいどのような組合せでも遺伝子数が正常にはならないために出生確率はゼロになります。
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●左:転座 17番の長腕の遺伝子の一部が4番の長腕に転座している |
染色体検査(夫婦;保険適応になります)。転座の確率は全不育症の5%程度で、不育症の原因としては多いものではありません。
なし
ただし、偶発流産で正常染色体胎児を失わないように、出生可能児の妊娠確率を熟知したうえで“通 信簿療法”を徹底しなければなりません。治療法がないという理由で染色体検査を嫌がる患者さんが少なくありません。ここでも染色体異常に対する日本人の強い差別 感が根底にあります。しかし、確率は低率ですが、この検査を行わないと、この後に述べる不育症の治療を行ったにもかかわらず流産に終わった場合に治療の正否が判断できない事があります。染色体検査は必要です。現実から逃げてはいけません。
最近、不育症の治療(検査?)として着床前診断が注目され、メディアも盛んに報道しています。体外受精で出生可能な染色体を持つ胚を移植する方法です。報道通 り、本当に不育症の患者さんを救う究極の治療法なのでしょうか? 着床前診断は転座を対象にしています。しかし転座が一個(一組)の場合の流産率は先ほどもお話したように50%です。この確率で胚を傷つけるという意味で胎児異常の原因となり得る、またもともと流産率が高く、リスクとコストも高い体外受精を応用する着床前診断を究極の不育症治療と主張する医師の本音が理解できません。転座が二組の症例(この場合の生児獲得率は12.5%になります)は極めて低率です。私も一例経験しただけです。私は着床前診断の派手な喧伝の動機は頭打ちになった体外受精の市場を拡げる目的があるのではないかと邪推しています。不妊症関係の報道は視聴読者の注目度が高いのでメディアも悪乗りしているのでしょう。


